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押方移転価格会計事務所の移転価格お役立ち情報
イノベーションボックス税制と移転価格税制の関連
- 2025.09.23
- 国際税務

令和7年4月1日以降開始事業年度から7年間にわたって、自ら新たに開発した特許権及びAI関連プログラムの譲渡や貸与から得た所得の一部を控除するイノベーションボックス税制が適用されます。
対象となる所得×自己創出比率×30%を損金に算入できますが、ここで自己創出比率とは、対象となる知的財産に直接関わる研究開発費総額のうち、「国内で自ら」行なった研究開発費(適格研究開発費)の割合のことです。
「国内で」行なった研究開発の成果だけが本税制の恩恵を受けますので、海外子会社や国外PE(海外支店等)に対する研究開発の委託費用は原則として適格研究開発費に含まれません。(研究開発の根幹を第三者に委託することは考えにくいため、第三者への委託費は国外事業者に対するものであっても適格研究開発費に含む)
また「自ら」行なった研究開発である必要がありますので、関連者や第三者から特許権等を借りたり買ったりした際の費用(ライセンス料)も適格研究開発費に含まれません。
ライセンス料は独立企業間価格か
当該ライセンス料は第三者への支払いであれば独立企業間価格といえますが、関連者への支払いの場合は独立企業間価格ではない可能性があります。
そのためイノベーションボックス税制は、関連者へのライセンス料が独立企業間価格であることを移転価格税制の考え方によって説明することを求めています。
関連者の定義も移転価格税制の国外関連者を準用しています。50%以上の出資関係、または役員兼務などの実質的支配関係がある場合です。
国内子会社との取引についてローカルファイルが必要
ただイノベーションボックス税制において適格研究開発費から除外するライセンス料には国内子会社への支払いも含まれます。
海外子会社とのライセンス取引には移転価格税制が適用されるため、既にローカルファイル等によって独立企業間価格であることが説明されているはずですが、国内子会社との取引は移転価格税制の適用対象外です。
そのためイノベーションボックス税制の適用による損金算入額が過大でないことを説明するために、国内子会社とのライセンス取引について新たにローカルファイル(と同様の書類)を用意する必要があります。
ローカルファイルの作成期限も移転価格税制を準用しています。ライセンス取引額が年間3億円以上の場合は申告期限までに作成する同時文書化義務が適用されますが、3億円未満の場合は税務職員から提出を求められてから一定期間以内に作成すれば足ります。
知的財産立国を目指して
日本の技術力向上を狙った新しい税制ですが、研究開発減税が開発リスクを減らす効果があるのに対し、イノベーションボックス税制は特許やAIプログラムなどのIPを活用して積極的に収入を得ることを促進する税制といえるでしょう。
知的財産の重要性は高まるばかりですね。
<この記事を書いた人>
押方移転価格会計事務所 押方新一(公認会計士・税理士)
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