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移転価格ガイドブックには見解の相違が起きやすいポイントが記載されている | 押方移転価格会計事務所

移転価格 ガイドブック 国税庁

2017年6月に国税庁から「移転価格ガイドブック」が発表されました。120ページ以上の資料ですが、非常に読みやすく書かれていますので、ぜひご覧になっていただきたいです。

狙いは「納税者の自発的な税務コンプライアンスの維持・向上」

移転価格税制に関する国際的な関心の高まりを受け、日本においても同時文書化義務(確定申告期限までにローカルファイルを作成する義務)がスタートするなど、移転価格税制への対応の必要性は高まっています。(会社規模別の移転価格税制対策はこちらから

そこで企業が自発的に税務コンプライアンスの維持・向上を図っていくための参考資料として、この「移転価格ガイドブック」が公表されました。

ローカルファイルのサンプルが2例収録されていますが、その冒頭(P81)に「納税者が自らローカルファイルを作成する際の参考資料です。」と記載されていることから、企業が自らローカルファイルを作成・更新できるようになることを国も推奨しているといえます。

移転価格対応に外部の専門家の関与が必須であるという状況は望ましくないという考え方は、OECDの見解とも合致するものです。(OECD移転価格ガイドラインとは

納税者側と調査側の両方の視点から解説

この「移転価格ガイドブック」で特に有用と思う箇所は、「Ⅱ 移転価格税制の適用におけるポイント(P29~P79)です。移転価格調査の各場面において、納税者サイドの主張と税務当局サイドの主張の両方が記載されています。

要は、見解の相違が起きやすいポイントが記載されているということですので、この部分を重点的に読むことをお勧めします。

同時文書化義務対象企業への対応窓口を設置

国税庁は2017年7月から、同時文書化対象企業の個別相談を受け付ける窓口を開設しました。また文書化についての助言を行うために、国税庁の職員が企業を訪問する活動も始まりました。

この「企業訪問」は税務調査ではないという位置づけですが、「企業訪問」によって得た情報を税務調査時に使用することは可能ですので、「税務調査に使うための情報収集ではないか」という企業サイドの警戒感はまだ解けていないと思います。

移転価格対応は新時代に移行しつつある

国別報告書(CbCレポ―ト)の税務当局間での自動交換、マスターファイルの税務当局間での共有、ローカルファイルの同時文書化義務の開始など、移転価格税制を取り巻く環境は急速に変化しています。

課税当局も全ての企業を調査して回ることはできませんので、企業が自ら移転価格税制に関するコーポレートガバナンスを充実させることを望んでいます。

グローバル企業として世界でビジネスを展開していくにあたって、移転価格税制に適切に対応できる社内体制を作ること(=移転価格対応の内製化)は必要不可欠な時代になってきています。

ローカルファイルを作成するだけでは移転価格問題は解決しない

移転価格対応の重要性を認識した企業は、コンサルタントにローカルファイルの作成を依頼することが多いのですが、ローカルファイルを単に作成するだけでは移転価格税制に関する問題の根本解決とはなりません。

ローカルファイルの代行作成には下記3つのデメリットが存在するためです。

デメリット① ノウハウの蓄積が不十分になる

ローカルファイルの作成を外注すると文書作成過程にブラックボックスが生じます。

完成したローカルファイル(移転価格分析報告書)についての説明を受けただけでは理論的背景や実務の細かい部分についての理解が不十分となる可能性が高いです。

税務当局にローカルファイルの内容を説明するのは企業自身なのですから、採用されなかった独立企業間価格算定方法などを含め、しっかりとローカルファイルの中身を理解しておくことが重要です。

デメリット② 年度更新のたびに多額のコストがかかる

ローカルファイルは毎期更新が必要な書類です。ローカルファイルの中身についての理解が不十分な場合、年度更新のたびに外部コンサルタントに依頼せざるを得なくなり、結果的にコスト増となります。

「〇年前に一度ローカルファイル(移転価格文書)を作ったのですが、予算の都合で、その後は放置されていまして・・」というご相談を受けることもあります。

ローカルファイルは1年分だけ作ってもあまり意味がありません。年度更新のことも考えた上で文書化を行いましょう。

デメリット③ 日常対応ができない

ローカルファイルの作成は移転価格対応の一部に過ぎません。

下記のような細々とした日常業務については、外部のコンサルタントがその都度対応することが難しいため、社内に移転価格税制に関するノウハウを蓄積しておくことが重要です。

    <日常的な移転価格対応の例>
  • 新しく始まる海外子会社との取引価格の設定
  • 商流変更が起きた場合の移転価格リスクの有無の検証
  • 利益率レンジからの逸脱が起きそうな場合の対応
  • 来期の予算・経営計画に移転価格上のリスクがないか検証
  • 親子ローン実行時の通貨及び金利の決定(海外寄付金対策)
  • 海外出張旅費が本社負担か子会社負担かを判断(海外寄付金対策)

移転価格税制に自社で対応できるようになろう

ローカルファイルの作成を外部コンサルタントに依頼するだけでは、移転価格税制に対する問題の根本解決にはならないことがおわかりいただけたと思います。

ローカルファイルの作成を外注するのではなく、移転価格税制及び海外寄付金に対応できる社内体制を整備することが重要です。

グローバル企業の一員として移転価格税制に対応できる会社になりたいとお考えの方は、当事務所のコンサルティング説明資料をご確認下さい。

コンサルティング説明資料のダウンロードはこちら
移転価格 コンサルティング

<この記事を書いた人>
押方移転価格会計事務所 押方新一(公認会計士・税理士)

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