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香港の移転価格税制とタックスヘイブン税制について | 押方移転価格会計事務所

香港 タックスヘイブン 移転価格 税制

タックスヘイブンとして有名な香港

香港は低税率国として有名です。法人税率16.5%ですので、日本のほぼ半分です。 シンガポールと並んでアジアにおけるタックスヘイブンとして知られています。

税負担率(≒法人税率)が20%未満の場合、タックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)の適用対象となりますので、香港に子会社を持つ日本企業は、移転価格税制だけでなく、タックスヘイブン対策税制についても気にかけておく必要があります。

今月(2016年7月)末に香港に出張し、香港における移転価格税制やタックスヘイブン税制の状況について現地のコンサルタントからヒアリングをしてきます。

帰国後この記事に追記しますので、香港に進出している企業の方はぜひご確認下さい。

【2016年8月1日 追記】

香港はまさにタックスヘイブン(租税回避地)です。

法人税率16.5%、個人所得税の上限15%と低税率の上、香港源泉所得だけが課税対象ですので香港国外の所得は非課税です。配当も非課税、相続税も非課税です。日本のオーナー企業が事業承継のために、あれこれ悩んでいますが、香港では無縁の話です。

税務当局の職員の数も少なく税務調査が行われることもあまりありません。政府にとって法人税や所得税の重要性がそれほど高くないということもありますし、もともと低税率ですので、企業側も課税逃れを行おうとするインセンティブが働きにくいのだと思います。

そのため香港に子会社をもつ企業は、日本本社側の税務リスクに注意をするようにしましょう。そして香港の場合は移転価格税制よりもタックスヘイブン対策税制を警戒すべきです。

ビジネス上の必要性があって子会社を設立した場合でも、トリガー税率である20%を下回る香港にある子会社の利益(所得)は原則として、日本本社に合算されます。

適用除外の4要件を満たしていれば適用除外となりますが、そのことをしっかりと説明できるロジックを組み立てておくことが重要だと思います。

【追記部分終了】

移転価格とタックスヘイブンの両方について検討が必要

移転価格税制は親子間取引(関連会社間取引)を独立企業間価格で行いなさいというルールであり、海外子会社の法人税率がどうであろうと関係ありません。

一方、タックスヘイブン対策税制は低税率国にある実体のない子会社(ペーパーカンパニー)が蓄えた利益のうち持ち分相当額を、日本の親会社の利益と合算するというルールです。

香港に子会社がある場合は両方の視点から検討する必要があります。

香港子会社との取引価格が独立企業間価格といえるかどうかという移転価格税制の視点と、香港の子会社はペーパーカンパニーではないと説明できるかどうかというタックスヘイブン対策税制の視点です。

ペーパーカンパニーではないといえるかどうかについては、タックスヘイブン税制の適用除外要件は管理支配基準がポイントをご確認下さい。

移転価格税制とタックスヘイブン税制のダブル追徴の可能性もある

香港に実体のない子会社を作り、その子会社に不当に安い価格で販売している場合、あるいはその子会社から不当に高い価格で商品を購入している場合は、移転価格税制とタックスヘイブン対策税制の両方から追徴される結果となります。

このような場合、どのように追徴されることになるのでしょうか。

移転価格税制とタックスヘイブン税制では、移転価格税制が優先適用されます。まず移転価格による所得の加算が行われます。次に子会社の所得が合算されるのですが、移転価格による加算額を控除した金額に持ち分比率を乗じた金額を加算することになります。

移転価格による所得加算額 3000
合算対象となる子会社の所得額 5000
持ち株比率 80%
の場合、合計加算額は、

3000+(5000-3000)×80%=4600となります。

移転価格税制は海外子会社の法人税率が何%であろうと関係はないのですが、「独立企業間価格以下で販売することにより、低税率国である香港子会社に所得を移転しているのではないか」という疑念を持たれる可能性はあります。

少なくとも日本側における理論武装はしっかりとしておきたいですね。

<この記事を書いた人>
押方移転価格会計事務所 押方新一(公認会計士・税理士)

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