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ベリー比(ベリーレシオ)は使いにくい | 押方移転価格会計事務所
- 2024.04.23
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売上総利益÷販管費で算出されるベリー比を利益水準指標として採用している企業があります。
ベリー比は海外子会社が特別な営業活動をしておらず単なる仲介者に過ぎない場合などに適切な指標と言われています。
商品を右から左に流しているだけなので売上高の金額自体に大きな意味はなく、手数料的な意味合いの粗利益と、それを獲得するために投下した販管費とのバランスが比較対象企業と同水準であればOKという考えです。
売上高営業利益率とベリー比
しかしベリー比は使いにくい指標です。
理由のひとつは、より多く採用されている売上高営業利益率などと比べて値がブレやすいことです。
粗利益率(売上高総利益率)が30%で売上高営業利益率が3%の場合、売上1000、売上原価700、販管費270ですので、ベリー比は(1000-700)÷270=1.11です。
粗利益率が30%で売上高営業利益率が8%であれば、売上1000、売上原価700、販管費220ですので、ベリー比は(1000-700)÷220=1.36です。
このように粗利益率が30%ぐらいあれば、売上高営業利益率が変動してもベリー比の動きは落ち着いています。
粗利益率が低いとベリー比は大きくブレる
ところが粗利益率が10%の場合、売上高営業利益率が3%だと売上1000、売上原価900、販管費70でベリー比は(1000-900)÷70=1.42となりますが、
売上高営業利益率が8%の場合は売上1000、売上原価900、販管費20でベリー比は(1000-900)÷20=5と急激に大きな値となります。
売上高営業利益率は同じ3%~8%の範囲であっても、ベリー比は粗利益率が低いほど振れ幅が大きくなるということです。
海外子会社が単なる仲介者に過ぎず、手数料的意味合いの粗利益を享受している状況であれば一般的に粗利益率は低いはずです。
振れ幅が大きいベリー比よりも、オーソドックスな売上高営業利益率の方が使いやすいのではないでしょうか。
売上総利益と販管費に相関関係があるのか
また単純な仲介貿易の場合にベリー比が適切なのかという根本的な疑問があります。
ベリー比を採用するには営業費用(販管費)というインプットとアウトプット(粗利益額)との間に比例関係とは言いませんが、ある程度の相関関係は必要です。
日本本社と現地ユーザーの間に入って商品の仲介をしている販売子会社の場合、売上や粗利益が2倍になったからといって販管費は相応に大きくなるのでしょうか。
1枚の伝票に記入する数量が増えるだけで販管費の総額はあまり変わらないのではないでしょうか。
比較対象企業のビジネスの中身がわかるのか
そしてベリー比が使えない最大の理由は比較可能性の担保が難しいことです。
ベリー比は売上原価と販管費の区分にシビアに影響を受けますが、比較対象企業の決算の詳細はわかりません。
また比較対象企業の販売活動が商品売買(卸売)なのか、形式的に間に挟まっているだけで実質的には手数料稼ぎ(役務提供)なのかの判断も簡単ではないはずです。
さらにいえば、比較対象企業は独立系企業の中から選ぶ必要がありますが、第三者である得意先と仕入先に挟まって右から左に商品を流しているだけの独立企業がどれだけ存在するのかも疑問です。
このようにベリー比にはいろいろ使いにくい点がありますので、採用する際には慎重な判断が必要だと思います。
<この記事を書いた人>
押方移転価格会計事務所 押方新一(公認会計士・税理士)
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