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海外子会社に対する債権放棄が損金に算入できる可能性 | 押方移転価格会計事務所

災害 債権放棄

海外子会社に対する債権放棄は簡単には損金に算入できません。グループ企業間ですので、恣意的な判断が入る可能性が高いからです。

しかし例えば、現在のウクライナ侵攻が原因でロシア子会社の事業継続が困難になっている場合のような非常事態でも認められないのでしょうか。

この点については、災害からの復興支援目的や感染症による入国制限などやむを得ない事情であれば、海外子会社に対する債権放棄の損金算入が認められるという通達がありますので、そちらを確認しましょう。

法人税法基本通達9-4-6の2(一部抜粋)

「法人が、災害を受けた得意先等の取引先に対してその復旧を支援することを目的として災害発生後相当の期間内に売掛金、未収請負金、貸付金その他これらに準ずる債権の全部又は一部を免除した場合には、その免除したことによる損失の額は、寄附金の額に該当しないものとする。」

(注)1 「得意先等の取引先」には、得意先、仕入先、下請工場、特約店、代理店等のほか、商社等を通じた取引であっても価格交渉等を直接行っている場合の商品納入先など、実質的な取引関係にあると認められる者が含まれる。
2 本文の取扱いは、新型インフルエンザ等対策特別措置法の規定の適用を受ける同法第2条第1号《定義》に規定する新型インフルエンザ等が発生し、入国制限又は外出自粛の要請など自己の責めに帰すことのできない事情が生じたことにより、売上の減少等に伴い資金繰りが困難となった取引先に対する支援として行う債権の免除又は取引条件の変更についても、同様とする。

子会社も含まれる

上記の「災害を受けた得意先等の取引先」の例示として子会社は挙げられてはいないものの、「実質的な取引関係にある者」とはいえますし、子会社を排除する特別な規定もありませんので、子会社も対象になると思います。

ウクライナ侵攻によるビジネスへのダメージを「災害」といえるかどうかは事実認定の話になってきますが、認められる可能性は十分あると思います。

合理的な再建計画に基づくやむを得ない債権放棄の場合

法人税法基本通達9-4-2も確認しておきましょう。(一部抜粋)

「法人がその子会社等に対して金銭の無償若しくは通常の利率よりも低い利率での貸付け又は債権放棄等をした場合において、その無利息貸付け等が例えば業績不振の子会社等の倒産を防止するためにやむを得ず行われるもので合理的な再建計画に基づくものである等その無利息貸付け等をしたことについて相当な理由があると認められるときは、その無利息貸付け等により供与する経済的利益の額は、寄附金の額に該当しないものとする。」

(注) 合理的な再建計画かどうかについては、支援額の合理性、支援者による再建管理の有無、支援者の範囲の相当性及び支援割合の合理性等について、個々の事例に応じ、総合的に判断するのであるが、例えば、利害の対立する複数の支援者の合意により策定されたものと認められる再建計画は、原則として、合理的なものと取り扱う。

事実認定の世界

本当にやむを得ない場合は損金算入が認められ得るとなっていますが、ハードルは決して低くありません。私が過去に関わった事例では1年以上かけて、役員会議事録などを整備していきました。

ウクライナ侵攻でロシア子会社が経営危機に陥った場合に適用できる可能性もあるとは思いますが、すべては事実認定の話になります。

税務調査時に激論になることは必至ですので、専門家と相談した上で慎重な判断を行いましょう。

<この記事を書いた人>
押方移転価格会計事務所 押方新一(公認会計士・税理士)

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