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海外出向者の給与計算でよく聞く「グロスアップ計算」とは | 押方移転価格会計事務所

出向者 人件費 海外

海外に子会社をお持ちの経理の方であれば、一度は「グロスアップ計算」という言葉を聞いたことがあるはずです。国内の給与計算では聞かない単語ですので、よくわからないという方もいらっしゃいます。

そこで今回は、グロスアップ計算について説明します。

グロスアップ計算をする理由だけではなく計算方法も紹介していますので、海外でビジネスを行っている企業の方は、ぜひ内容をご確認下さい。

グロスアップ計算とは?その意味を詳しく解説

海外に出向者を送る際、一種の福利厚生として、海外出向者が現地で負担すべき所得税を会社が負担することがあります。

例えば海外出向者Aさんの年収が1000万の場合(通貨単位は省略)、ここから所得税を支払って、手取り金額は800万程度になるのが通常ですが、この所得税を会社が負担して手取り金額を1000万にするということです。(いわゆる「みなし所得税」はここでは無視)

出向社員には嬉しい制度ですが、給与計算をする側にはひと手間が発生します。

「会社が所得税額を負担する」というのは表現に過ぎず、税法上は給与所得を得たAさんに所得税を納める義務があります。

一見、会社が負担しているようにみえても実際は、所得税額を控除(源泉徴収)した残額をAさんに支給するとともに、会社がAさんの所得税をAさんの代わりに税務署に納付しているだけです。

所得税法は強行法規ですので、社内規定にどのように書いていてもこれは変わりません。

そのため所得税を支払った後の手取り金額が1000万になるような正しい給与収入額を逆算する必要が生じます。その計算のことをグロスアップ計算と呼びます。

所得税の税率が一律30%であると仮定し、グロスアップ計算で試算してみましょう

Aさんの年収1000万に対する所得税300万を会社が負担しようとした場合、この300万はあくまでもAさんに給与として支払い、Aさんが所得税を納めたという形にしなければなりません。

そこで300万を所得に加え、年収1300万として所得税を再計算することになります。すると所得税は、1300万円×30%=390万と計算されます。

今度はこの390万円を所得に加えて再計算します。すると所得税額は、1390万円×30%=417万と計算されます。この計算をエクセルか何かを使って10数回繰り返すと、ほとんど数字が動かなくなります。

今回のケースですと、

・3回目 1390万×30%=417万
・4回目 1417万×30%=425.1万
・5回目 1425.1万×30%=427.53万


・11回目 1428.5689万×30%=428.5707万
・12回目 1428.7507万×30%=428.5712万
・13回目 1428.5712万×30%=428.5714万
・14回目 1428.5714万×30%=428.5714万

となり、14回目以降は小数点以下の動きとなります。この428.5714万+1000万=1428.5714万がAさんの申告すべき給与収入ということです。

検算してみますと、1428.5714万×30%=428.5714万となり、手取りがちょうど1000万になります。

実際は各種所得控除等もありますし税率も所得のゾーンに応じた累進課税になっていますので、もう少し複雑な計算になりますが基本的な考え方は同じです。

グロスアップ計算の注意点

注意すべき点としては、海外出向者の所得税を会社が負担した場合、会社の損金として処理することを認めている国があるということです。

この場合、グロスアップ計算は必要ありません。本人に1000万円払い、300万円を所得税相当額として会社の損金として処理すれば終了です。

会社の負担は総額1300万になります。グロスアップした場合は上述のように1428.5714万ですので、損金算入できることによって会社負担が約128万円減ることになります。実務上は、個別に判断が必要ということですね。

まとめ

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グロスアップ計算についてのイメージをつかんでいただけましたでしょうか。実際の計算は現地法人の会計事務所が行うことになると思いますが、グロスアップ計算の趣旨については親会社でも理解しておくようにしましょう。

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この記事は国際税務の一分野である移転価格税制専門のコンサルタントが書いています。
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<この記事を書いた人>
押方移転価格会計事務所 押方新一(公認会計士・税理士)

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