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【重要】会社法に基づく企業集団の内部統制整備のための活動はグループ内役務提供に該当しないと明記 | 押方移転価格会計事務所

移転価格 会社法 内部統制

移転価格事務運営要領と参考事例集の改訂が行われました。

大きな改正点はOECDガイドラインで既に提言されている「低付加価値グループ内役務提供の5%マークアップ」です。

低付加価値IGSについてはまたの機会に記事を書こうと思いますが、個人的には別の点により大きな注目を置いています。

関連記事:「低付加価値グループ内役務提供とは」

株主活動の例示が追加

それはグループ内役務提供に該当しない株主活動の例に下記が追加されたことです。

親会社が会社法第348条第3項第4号に基づいて行う企業集団の業務の適正を確保するための必要な体制の整備その他のコーポレート・ガバナンスに関する活動

会社法第348条第3項第4号(平成26年改正で施行規則から会社法本体に格上げ)は下記です。

取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備

いわゆる内部統制システムのことです。法務省令で定める体制とは下記です。(会社法施行規則第98条1項)

会社法348条3項第四号に規定する法務省令で定める体制は、当該株式会社における次に掲げる体制とする
 一 取締役の職務の執行に係る情報の保存及び管理に対する体制
 二 損失の管理に関する規程その他の体制
 三 取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制
 四 使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制
 五 当該株式会社並びにその親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制

つまり親会社が国内外の子会社を含む企業集団の内部統制を整備・構築するための活動はグループ内役務提供には該当しないことが明記されたということです。(会社法348条、施行規則98条は取締役会非設置会社に対するものであり、取締役会設置会社に対しては会社法第362条、施行規則100条が適用されますが、今回の改正趣旨は取締役会の有無とは直接関係ないと思います。)

会社法に基づく内部統制システムは、上場企業のみに適用される金融商品取引法上の内部統制報告制度(J-SOX)とは別ですので、全ての会社が遵守しなければなりません。(会社法上の大会社(資本金5億円以上または負債総額200億円以上)は上記体制について決議し、事業報告書に記載することが義務付けられていますが、これは大会社以外の会社は企業集団内部統制を整備しなくていいという趣旨ではありません。)

改正前でも同様の解釈ができなくはなかった

改正前の移転価格事務運営要領3-9(3)ロにおいても、

親会社が実施する株主総会の開催や株式の発行など、親会社が遵守すべき法令に基づいて行う活動

は株主活動に該当すると明記されており、「親会社が遵守すべき法令」に会社法が含まれることは当然ということをセミナーではお伝えしてきました。

もう少しいうと現場に行かないとできないこともあるので、その時は出張旅費がかかりますよね、ともお伝えしてきました。

平成26年改正で施行規則から会社法本体に格上げされたことからも明らかな通り、会社法の立場としては、グループ経営の時代であり、親会社は子会社のガバナンスについて管理責任を負うべきというスタンスを明確にしてきています。

最近の大企業の不祥事においても、正確には子会社で起こった事件について親会社の責任が問われていますが、法的にも親会社の取締役は子会社の不正について責任を負っているということです。

一方、法人税法の立場としては、グループ企業とはいえ別企業なので財布は別にしてもらわないと困るというスタンスです。

法律の制度趣旨が異なることが原因ですが、コーポレートガバナンスの点については今回の改正で整合が取れることになりそうです。(国税庁の見解は「解釈は変わっておらず明確化されただけ」ということかもしれませんが。)

参考事例集【事例23】の改正

移転価格参考事例集の【事例23】も改正されました。

<改正前>
P社は、S社の所在地国における現地法令の遵守状況を監査するとともに、問題点が把握された場合にはS社に対して改善指導を行っている

⇒上記は株主活動に該当しない

<改正後>
P社は、会社法に基づいて行う企業集団の業務の適正を確保するための必要な体制の整備を図るため、S社の所在地国における現地法令の遵守状況を監査するとともに、問題点が把握された場合にはS社に対して改善指導を行っている(S社は自らにおいても現地法令の遵守状況の監査を行っている。)

⇒上記は株主活動に該当する

S社が自ら監査を行っているという前提で、P社が会社法に基づいて行うS社の内部統制を整備するための監査や改善指導は株主活動であるため、必要なコストはP社が負担するということです。

グループ内役務提供に該当するかどうかを判断する際に非常に大きな意味を持つ改正です。

ミニワーク

最後に「ミニワーク」をご提案します。ぜひ社内の皆さんと一緒に考えてみて下さい。

❝ミニワーク❞
「海外子会社の不祥事を防止・発見するために御社はどのような体制を整備していますか?企業集団の内部統制について、会社法を遵守しているといえる状態でしょうか?」

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この記事は国際税務の一分野である移転価格税制専門のコンサルタントが書いています。
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<この記事を書いた人>
押方移転価格会計事務所 押方新一(公認会計士・税理士)

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