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シェアードサービス(グループ内業務委託・受託契約)の対価について | 押方移転価格会計事務所

シェアードサービス

移転価格税制は海外子会社との取引を独立企業間価格で行うことを求めるルールであり、対象となる取引には棚卸資産の売買だけでなく、関係会社間の業務委託取引(サービス提供)も含まれます。

本業付随業務の場合

グループ企業間のサービス提供の典型例のひとつが、メーカーが海外子会社に出張して製造設備に関して技術指導を行う場合です。

移転価格事務運営要領において、このような「本業に付随する業務」の場合は、「サービス提供に要した総原価(直接費+間接費)をもって独立企業間価格とする方法を必要に応じて検討する」と規定されています。

ですのでサービスに要したコスト分だけを請求していれば利益は上乗せしなくていいことが多いです。

シェアードサービスの場合、原価だけでは不十分

グループ経営が活発になった近年においては、グループ企業の人事や経理、システム管理などを集中的に引き受けるシェアードサービス専門の部署や子会社を作るケースがあります。

日本本社の一部門やシェアードサービス専門子会社に業務委託をするということですが、海外子会社との間でサービス提供が行われた場合は移転価格税制の適用対象となります。

ですが上述の技術指導のように総原価だけを請求すればいいかというと、この場合は事情が異なります。

技術指導の場合の総原価を請求すればいいというルールは、「本業に付随する業務の場合」という条件がついていますので、シェアードサービスの場合は、総原価に適切な利益を上乗せする必要があります。 

簡易な算定方法

シェアードサービスについては、移転価格事務運営要領3-11が参考になります。

くどくど長い規定ですが、下記条件を満たす場合は簡便な方法(総原価+5%)で独立企業間価格としてよいとされており、シェアードサービスは条件を満たす可能性があります。

移転価格事務運営要領3-11
(1) 法人と国外関連者との間で行われた役務提供が次に掲げる要件の全てを満たす場合には、その対価の額を独立企業間価格として取り扱う

イ 当該役務提供が支援的な性質のものであり、当該法人及び国外関連者が属する企業グループの中核的事業活動に直接関連しないこと。

ロ 当該役務提供において、当該法人又は国外関連者が保有し、又は他の者から使用許諾を受けた無形資産を使用していないこと。

ハ 当該役務提供において、当該役務提供を行う当該法人又は国外関連者が、重要なリスクの引受け若しくは管理又は創出を行っていないこと。

ニ 当該役務提供の内容が次に掲げる業務のいずれにも該当しないこと。
(イ) 研究開発
(ロ) 製造、販売、原材料の購入、物流又はマーケティング
(ハ) 金融、保険又は再保険
(ニ) 天然資源の採掘、探査又は加工

ホ 当該役務提供と同種の内容の役務提供が非関連者との間で行われていないこと。

へ 当該役務提供を含む当該法人及び国外関連者が属する企業グループ内で行われた全ての役務提供(イからホまでに掲げる要件を満たしたものに限る。)をその内容に応じて区分をし、当該区分ごとに、役務提供に係る総原価の額を従事者の従事割合、資産の使用割合その他の合理的な方法により当該役務提供を受けた者に配分した金額に、当該金額に100分の5を乗じた額を加算した金額をもって当該役務提供の対価の額としていること。
 なお、役務提供に係る総原価の額には、原則として、当該役務提供に関連する直接費の額のみならず、合理的な配賦基準によって計算された担当部門及び補助部門における一般管理費等の間接費の額も含まれることに留意する

(注) 法人が国外関連者に対して行った役務提供が、当該法人が自己のために行う業務と一体として行われた場合には、ヘの定めの適用に当たり当該業務を当該役務提供に含めた上で役務提供の対価の額を算定する必要があることに留意する。国外関連者が法人に対して役務提供を行った場合についても、同様とする。

ト 当該役務提供に当たり、当該法人が次に掲げる書類を作成し、又は当該法人と同一の企業グループに属する者から取得し、保存していること。
(イ) 当該役務提供を行った者及び当該役務提供を受けた者の名称及び所在地を記載した書類
(ロ) 当該役務提供がイからヘまでに掲げる要件の全てを満たしていることを確認できる書類
(ハ) ヘに定めるそれぞれの役務提供の内容を説明した書類
(ニ) 当該法人が実際に当該役務提供を行ったこと又は当該役務提供を受けたことを確認できる書類
(ホ) ヘに定める総原価の額の配分に当たって用いた方法の内容及び当該方法を用いることが合理的であると判断した理由を説明した書類
(ヘ) 当該役務提供に係る契約書又は契約の内容を記載した書類
(ト) 当該役務提供において当該法人が当該国外関連者から支払を受ける対価の額又は当該国外関連者に支払う対価の額の明細及び計算過程を記載した書類

総原価の範囲に注意

移転価格事務運営要領3-10に「海外子会社からの要請に応じてサービス提供ができる状態を定常的に維持している場合は、そのこと自体が役務提供に該当する」という規定があります。

これは上記下線部分の「当該役務提供に関連する直接費の額のみならず、合理的な配賦基準によって計算された担当部門及び補助部門における一般管理費等の間接費の額も含まれる」と関連する部分ですが、総原価の額には担当者の直接人件費だけでなく、オフィス家賃などの間接費も含まれることに注意が必要です。

グループ企業間のサービス取引についてのルールは概ねこのような感じですが、実際の取引にはいろいろな事情がありますので杓子定規にあてはめることができず、税務調査での交渉が必要な場面もあるはずです。

一通りのルールは押さえた上で、「自社のケースは独立企業間でも成立し得る取引だ」と主張ができるよう理論武装しておくことが大事だと思います。

<この記事を書いた人>
押方移転価格会計事務所 押方新一(公認会計士・税理士)

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